殺し屋1の感想。漫画版・映画版どちらもグロさは共通しているが・・

殺し屋1は日本が誇る変態漫画だ。

ただただ、非現実を表した妄想の中の変態漫画なら山程ある。

が、殺し屋1にはリアリティたっぷりの日常の中に、エロスとグロテスクとバイオレンスの三重奏が見事なまでに描かれている。

 

殺し屋1あらすじ

元いじめられっ子のイチは気弱で臆病モノだが、内面は超ド級のサディストで正体不明の殺し屋。
ジジイという(現在の言葉で言うと表面的には半グレ?)で歌舞伎町の謎の住人に雇われて殺し屋をしているが、イチの中では殺すという行為が性的快楽と結びついている。
一見、ジジイの目的は、暴力団・安生組の壊滅を図っているが・・・
安生組の幹部・超ド級マゾヒストの垣原と超ド級サディストのイチ。
両極端に存在する異常性愛者二人でしか分かり合えない異常な快楽の真理の追求。
二人の運命は必然性と偶然、そして壮大な演出を通して絡み合う。
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作者は山本英夫

代表作は、殺し屋1を含めて、(おカマ白書)(のぞき屋)(ホムンクルス)が有る。

初期のおカマ白書はギャグ要素が強かったが、次の作品の、のぞき屋に至って、人間の深層をえぐりだすような試みが各エピソードに盛り込まれていく。

弘兼憲史のアシスタントの経験が有るようだが、弘兼憲史とは真逆のベクトルで人間を描いている所が個人的に面白いと思った。

ちなみに現在連載中?の作品はHIKARI-MAN。

こちらは刊行はかなり遅れ気味・・というより、続きを描いてくれるのか心配なレベルである。

原作を手がけた作品も有り、最も新しい原作作品はアダムとイブ。

内容は、かなり実験的な内容だった。

何より作画担当が大御所の池上遼一というのが興味深い所である。

漫画・殺し屋1の感想

私は殺し屋1は連載中から、毎週楽しみに読んでいた漫画。

なにに引き込まれたかと言えば、とにかくエロスを追求する変態達がリアル。

そしてグロの表現もこれ以上無いくらいにリアルでグロテスク。

この私が言っているリアルというのは描写がリアルという事ではなく、あくまで表現がリアルということ。

上手く伝えられないが、流れる血を描写的にリアルに描いた場合は、言葉上では血液となってしまいがち。

が、この漫画の作者の山本英夫が血液を描くと、血でも血液でもなく、生きている人間の体液として見事なまでにグロく描かれる。

この辺りが、只々グロいだけのスップラッター漫画とは一線を画す部分だ。

それだけなく、ストーリーの展開も秀逸で、一見、意味不明の変態達の行動にもそれに意味があることを悟らせ、裏切りと意外性の多いストーリー上に沿う様に描かれている。

この描かれ方の上手さは、私は性的にノーマルな人間だが、思わずちょっと理解できてしまいそう?になってしまうほど。

とにかく個性的なキャラばかりで、それぞれのトラウマや人間模様も、端的に特徴を抑えてあって読んでいてこっちの世界もあるのか・・と思わず唸ってしまうほど。

変態には変態の奥深さが有り、それぞれの変態達が己の快楽に従って生きているのが面白い所だと思う(殆ど異常な性癖ばかりだけど・・・)

 

あと個人的に血の気の多いヤクザ世界を舞台にして描かれる漫画の割に、キャラ被りしないのは珍しい事じゃないだろうか?と私は思った。

おそらくそれもそれぞれの変態性をしっかりと描いている為だろう。

まさに本当の意味でのアウトローばかり。

 

私の中で最初から最後まで、ここまで変態に費やしてリアルな世界観が見事に描かれた漫画は少ないと思う。

で、映画版の感想

映画版はもちろんR18指定だ。

ビジュアル的につまらない訳では無いが、グロさの作り込みの必死さが少し目立ちすぎる感もある。

やはり、漫画的なリアルと、映画の実写の持つリアルの差異はある。

個人的に、漫画版を知る上では強調しなくても良い暴力シーン、拷問シーンを必要以上にリアルさを表現してしまっている部分が鼻に着いてしまう部分があった。

 

あと、映画版は特に何となく垣原の方が多く描かれている印象で、監督の思い入れはどちらかといえばそちらに向かっている??と思う。

確かに垣原演じる浅野忠信は格好いいのだが・・

見ていて残念なのは、なによりストーリーの欠けてしまった部分が多い所。

グロさ等をとやかく言うつもりは無いが、もう少し技術的に頑張ってる感を少し減らして欲しかった。

もし、他に似た世界観を求めるのなら石井隆監督の「GONIN」の方をオススメ。

AMAZONプライム会員なら無料で視聴できる。

まとめ

殺し屋1は個人的に漫画史上に残る名作だと思う。

ここまで深い部分のサドとマゾをテーマに描ききった漫画は少ないだろう。

グロもエロスもバイオレンスも一作に詰め込まれた凄まじさを、味わいたい人がいるのなら必ず読んでいただきたい作品である。